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パソコンで家を建てるって、アプリ開発で稼いで家を建てたという話ではありません。実物の家を建てるシステムの話です。
大ヒット映画「きみの名は。」にも出演した2世代前のシャープ製の名機X68000で、本物の家を建てる建築システムをつくったことがあります。
家を建てるシステムを設計してみた
X68000というパソコンは、1990年代の古いパソコンですが、筐体デザインが美しいので、いまでも人気のパソコンです。「きみの名は。」の新海監督もあこがれていたパソコンなんでしょうね。
ありますよ。ほら。 https://t.co/oNkaM2Ap8n pic.twitter.com/n6Yf61hb9d
— 新海誠 (@shinkaimakoto) August 29, 2016
設計図をパソコンでつくる
そのX68000というパソコンは、建築用のCADソフトも発売されていたのです。CADとは、家の設計図を書くためのソフトウェアです。
CADで設計すると、柱だとか屋根だとか必要な建築材の設計図ができあがります。あとは、設計図通りに材料を加工すれば、建築材料ができあがるというわけです。
数値加工装置という機械で木を切る
材料を加工する機械に、NC加工機というものがあります。加工する寸法を機械に入力すると、勝手に木材などを切ってくれる優れた機械です。
つないだら建築システムになっちゃった。。
CADでつくられた設計図のデータを、NC加工機に流せば、家を建てるのに必要な木材が自動的にできあがるわけです。
ということで、我々エンジニアは、X68000とNC加工機の間に、高性能なワークステーションを置き、CADデータをNC加工機に流し込むソフトウェアを開発しました。
目の前で大木が削られ、建築材料に加工されている姿をみていると「コンピュータってすごいなぁ・・」と感動しますよ。
開発を失敗すると大木がいくつも無駄になる緊張感。
テスト段階から木材を切るわけにはいきませんから、なんどもなんどもシュミレーションテストを繰り返します。
木材の加工には順番があります。加工する機械にもそれぞれ役割があるので、データを流し込むタイミングも重要なのです。
加工の手順を簡単に説明すると、
1.丸太を最適な長さに切る
2.角材に加工する
3.角材に穴を空け建築材料
4.木材の部位を印刷するインクジェットプリンター
これらの機械に、加工データを順番に流し込むわけです。タイミングがずれると、機械が空振りして手動で木材を戻します。最悪、木材が無駄になることもあります。
本番で失敗したら、いくら弁償しないといけないんだろう?と緊張しながらシステム開発、テストを繰り返していました。
婚活システムのときはテストは楽しかったんですけど・・
杉の木1本の値段は?
杉の木1本、いくらするか知っていますか?
システム開発に失敗して、弁償を迫られると困るので・・。と思いつつ、当時は「会社が弁償するだろ」と考えて調べもしませんでした。
改めていま調べてみると、ある山火事での被害総額の記載を発見しました。
樹齢20年から50年の杉やヒノキが1100本で750万円の被害
ん? 1本あたり6818円 !?
思ったほど高くないものなんですね。開発当時、すっごい緊張して損したような・・。
SEの醍醐味を実感
現場テストで木材工場を訪問すると、わたしの何倍もある大きな機械がたくさんあります。
「この大きな機械が、わたしが作ったアプリで動く・・!?」
とても信じられなかったのですが、CADデータを受け取り、テストデータを投入すると、ごぉーという音とともに、大きな機械が動着始めました。
加工テストは問題なく一発終了!
プログラムは、NC機に縦横間違いなくデータを渡すだけの簡単なものなので、開発自体はわずか1ヶ月程度でした。
けれど、自分の身体の何倍もある機械が、自分の作ったプログラムで動くなど想像したこともありませんでした。こどもの頃に見た、鉄人28号のように、ロボットを自分で操作したような感覚でした。
SEって、こんなこともできるんだ。。。SEという仕事の醍醐味を知って大好きになった瞬間でした。
その感動を味わいたくて、いまだにSEやってます(笑)